春の色をナチュラルに残すPENTAX
4月。染井吉野から八重桜が楽しめるシーズン。そして桜の木が目に入るたびにアングルを探してしまうというカメラ趣味の人を悩ます季節でもある。だが、撮ることを目的にすると桜の美しさを感じることが疎かになってしまい、結果フリー素材のような写真を量産してしまう。ということで今年は撮る前にまずはちゃんと見ようと心がけてみた。ちゃんと見るということでは一眼レフのファインダーは肉眼に近い光を感じながら撮れるため、撮りながらその風景を記憶に残しやすいという長所がある。そしてPENTAXは光学ファインダーの見え方にこだわりを持つメーカーでその見晴らしの良さとクリアで自然な色は撮影の楽しさを教えてくれる。
1枚目の写真は、桜の花の重なりを強調するために開放で撮影してみた。カメラはPENTAXのAPS-CのフラッグシップカメラK-3 Mark Ⅲ。APS-Cフォーマットのカメラというとファインダーが小さく視界が窮屈だと想像してしまうかもしれないが、K-3MarkⅢはフルサイズ同等の見晴らしを実現しクリアで広い視界に引き込まれるような感覚になる。レンズはFA31mm Limited。シャープさが魅力のレンズだけど、僕は風景でも離れたところにある被写体を強調したいので開放で撮影することが多い。K-3MarkⅢに装着するとフルサイズ換算47mmとスナップが気持ちいい焦点距離に。僕が散歩に最も持ち出す頻度が高い組み合わせだ。
ことなる種類の桜が重なるのも新宿御苑の魅力の一つ。この日は曇り空で、桜の淡いピンクを柔らかに捉えることができた。
垂れ下がる枝と花を印象的に捉えるのにはFA77mm Limitedが便利。K-1でポートレート撮影が趣味の人ならばFA77mmは使用頻度が高いレンズ。僕はポートレートは撮らないので、このように被写体に寄って切り取りたいときにK-3 Mark Ⅲに組み合わせて119mmの中望遠レンズとして使用することが多い。F1.8のこのレンズは大きなボケももちろん絞ればシャープな描写を得られる。こちらはF5.6まで絞って撮影。シャープさもあるが繊細な発色もこのレンズの魅力。
Limitedレンズのデザイン…かっこいい。休憩中に眺めていても楽しめるポイント。美味しいコーヒーが飲みたくなるな。
ライトアップされた桜と夜空のコントラストを描き分けられるところも、K-3 Mark Ⅲの高感度での描写性能の高さかもしれない。流石にあまり感度を上げて撮ることはないのだけどノイズを抑えて撮れる範囲が広いというのは安心感がある。ISO800、F5と絞っても1/30sというシャッター速度で手持ちでも撮れてしまうため、僕の撮影は日中よりも夕方や夜も多い。それにしてもライトアップされた桜の色と枝、空の色がよく分離されていている。ちなみにこの記事の写真はどれも撮って出しである。
公園の桜はゆっくり鑑賞できるのが魅力だが、街中に咲く桜も立ち並ぶ建物との対比が面白い。渋谷恵比寿から広尾の明治通り沿いは、桜の木が並び一斉に花が咲く。散る際には桜吹雪が見られ写真撮影に絶好のスポットである。娘を載せたベビーカーを押しながらいろんな景色を見せるため、恵比寿の手間の渋谷から歩き始めることにした。ちょうど桜が並ぶ坂道に写真撮影をしようとする人が集まっていた。桜を見ようと人が集まる賑やかな雰囲気も明るい気持ちにさせてくれる。レンズは街中での交換を避けるために、標準域をカバーするPENTAX-DA★16-50mm F2.8 ED PLMというメーカーの最高の技術を導入して作られたスターレンズと言われるレンズを選んだ。細かいスペックは省くがスターレンズというだけあって、クリアな描写とAPS-Cということを忘れてしまいそうなボケの量と滑らかさ。また、これは最近気がついたのだけれど、スターレンズなのにLimitedレンズのような空気感が得られること。表現が難しいがただクリアなレンズだと写真としてはつまらないと感じたりするものだが、何か深みのある写真に仕上がるようだ。ただしそこについてはメーカーのサイトには記載がないのが勿体無い。
上ばかり眺めてないで足元を見れば散った桜の花びらもまた感動を与えてくれる。
早朝。出勤前かな?ベンチに座ってしばらく桜を眺めている女性。うっすら曇り空で光が柔らかく、桜の繊細な色にピッタリ。青空もいいけどこういう天気の方が味わいのある写真になる気がする。そしてPENTAXの良さはこういう条件で発揮されると思う。エモさや派手さとは違う味わい深い繊細さが僕がPENTAXを使う大きな理由の一つとなっている。
Camera:PENTAX K-1 Mark Ⅱ Lens:HD PENTAX-FA77mm F1.8 Limited
染井吉野から八重桜になると一気に季節華やかになる。様々な色の花びらが玉状に密集して咲いていて可愛らしい。ファインダーを覗きながらどこを切り取ろうかと考えるのも楽しい時間だ。これはAPS-CではなくフルサイズのK-1 Mark ⅡにFA77mm Limitedを装着して撮影したもの。K-3 Mark Ⅲとは違い深みのある落ち着いた色と立体感が特徴。フルサイズらしくボケ量も大きく開放で撮った時のメリハリはとても情緒的な雰囲気になる。
八重桜が最後の桜ではないとは思うが、花見シーズンとしては終盤である。花見シーズンで桜を撮ろうと思うと、スマホを構えたりカメラを構える人で桜の木の周りは混雑する。そんな時にこそF値が小さくボケ量が多いレンズは背景ボケを利用して花見の賑やかさも一枚に収めることができるのがカメラのいいところだろう。スマホの方が手軽なのだろうけど、ファインダーを覗いて撮ることで被写体をより観察するだろうし、なぜここを切り取るのかというのはスマホより考えなければならない。ただし、それだけのことを考える手間があるからこそその時間や見たものは記憶に残りやすいのだと思う。
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