土曜日、久しぶりに一人で新宿御苑へ出かけた。
この日は雨。以前、8月に訪れたときのような土砂降りではなく、降ったり止んだりの穏やかな雨だった。
今週は仕事がなかなか大変だったこともあって、休日は少し気持ちを切り替えたかった。
先週はSIGMA fp LとDP2 Merrillを持って散歩したのだけれど、やっぱり光学ファインダーを覗く体験には特別なものがあると改めて感じた。
ということで、今回は2台とも光学ファインダーを備えたPENTAXの一眼レフを持ち出すことにした。
PENTAX K-1 Mark II + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art。PENTAX K-3 Mark III Monochrome + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art。どちらも自分にとって散歩で使いやすい標準域のレンズだ。
やっぱり一眼レフが好きな理由
自分が一眼レフを使いたくなる理由は、光学ファインダーで目の前の風景を見ながら、露出や仕上がりを考えて撮る過程と、手に残るシャッターの感触が好きだからだ。ミラーレスカメラのEVFは本当に便利だと思う。露出補正や色の調整が撮影前からファインダーに反映されるので、撮影結果をイメージしやすい。
でも、自分にとって撮影体験の心地よさは、便利さだけでは決まらない。
光学ファインダーは、目の前の風景を映像としてデジタル化せず、そのまま光として見ることができる。ファインダーを覗く前に見ていた風景と、ファインダー越しの風景との感覚的なズレが少ない。
そして、露出補正をしてもファインダーの景色は変わらない。撮影結果を確認してからシャッターを切るのではなく、自分で変化を考えて操作し、撮影してから結果を確かめる。この違いは自分にとって結構大きい。
もちろんテンポも変わるけれど、考える手間があることで、自分が何をどう撮ろうとしているのかを意識しやすくなる気がする。
そして、もう一つはシャッターフィール。ミラーとシャッターの動作が手に伝わる感触は、単に写真が撮れたという以上に、シャッターを切った瞬間を実感させてくれる。
人それぞれカメラとの付き合い方は違うと思う。自分の場合は、そもそも面倒くさがりなので、便利になりすぎるとあまり考えなくなるところがある。
だからこそ、少し手間のかかる一眼レフがちょうどいい。写真を撮ることだけでなく、撮影するために考えて操作する時間そのものが楽しいのだと思う。
雨の新宿御苑を歩く

撮影:PENTAX K-1 Mark II + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art
いつものように西側の日本庭園から歩き始める。雨の日の御苑は空気が落ち着いている。
人が少ないというだけでなく、曇った空の下で木々の色も控えめになり、全体が静かに感じられる。

撮影:PENTAX K-1 Mark II + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art
見慣れた木々に改めて向き合いながら撮る。何度も来ている場所なので、目新しい風景があるわけではない。それでも、天候や季節によって見え方は少しずつ変わる。

撮影:PENTAX K-3 Mark III Monochrome + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art
今回は同じ木をカラーとモノクロの両方で撮ってみた。カラーでは湿った緑や土の色が残り、モノクロでは幹の質感や枝の形、背景の陰影に自然と目が向く。
雨の日は特にMonochromeが合っているように感じる。カラーで撮っても、色の主張が弱く、モノクロに近い印象になる場面が多い。色よりも陰影を見ている感覚に近いのかもしれない。

撮影:PENTAX K-3 Mark III Monochrome + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art
途中から、カメラ趣味のサークルらしき集団と歩くペースが重なった。
以前なら少し気になったかもしれないけれど、今はお互い邪魔にならないよう撮影位置に気を遣えば、自分のペースを変える必要もないと思っている。とはいえ、どんな視点で何を撮っているのかはちょっと気になる(笑)。
そういえば、誰かと一緒に写真を撮りに行ったことは、これまで一度しかない。それも二人で出かけたくらいだ。大勢で散歩しながら撮るという感覚は、まだよく分からない。
でも、同じ風景を見ていても、誰がどこに目を向けるかは違うはずで、その視点や撮った写真を共有するのは楽しそうだ。
3、4年前に声をかけてくれたハッセルブラッドを持ったおじさん以来、撮影中に話しかけられることはほとんどない。少し寂しい気もするけれど、だったら自分から話しかければいいという話でもある。もっとも、何をきっかけに声をかけるか悩むんだけどね。
見慣れた風景を、どう残すか

撮影:PENTAX K-1 Mark II + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art
最近、以前ほど背景を大きくぼかした写真を撮らなくなった。
主被写体だけを際立たせるよりも、絞り込んで被写界深度を深くし、画面の中にある複数のものを見られる写真の方がいいのではないかと考えている。写真を見た人が、自分の視点で画面の中を眺め、何かを見つけられる方が、長く楽しめる気がするからだ。
もちろん、ただ全体にピントを合わせればよいという話ではない。どんな風景を、どこから、どの範囲まで残すか。そんなことを考えながらファインダーを覗いている。

撮影:PENTAX K-3 Mark III Monochrome + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art
雨の日は普段なら見過ごしてしまうものにも目が向く。濡れた地面の反射や、葉に付いた水滴、薄暗い木々の重なり。派手なものではないけれど、その日、その場所にあった風景として残したくなる。

撮影:PENTAX K-1 Mark II + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art
日本庭園から南側の池の周辺を歩き、プラタナス並木へ向かう。

撮影:PENTAX K-1 Mark II + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art
ここも何度も撮っている場所だ。整然と並んだ木々とベンチ、地面に落ち始めた葉。曇った空の下では華やかさはないけれど、雨の日ならではの静けさがある。
今回の散歩で、個人的にはこうした何でもない風景が一番好きだったりする。
ただ、それは自分が実際に雨の中を歩き、その空気を感じていたからかもしれない。写真だけを見た人には、単なる地味な御苑の風景に見える可能性もある。
でも、自分が撮りたいと思った理由がそこにあるなら、それでいいとも思っている。写真を撮る目的は、必ずしも人に強い印象を与えることだけではないのだから。
秋のバラを撮りながら考えたこと
プラタナス並木を抜けてバラ園へ。少しずつ花が咲き始めていて、秋バラの季節も間もなくという感じだった。

撮影:PENTAX K-1 Mark II + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art
昔は花の写真をかなり撮っていたけれど、最近は以前ほど積極的に撮らなくなった。花はきれいに撮れる。
ただ、その美しさを写真に残すことと、自分ならではの視点を見つけることは別の話で、どう撮ればいいのか迷うことが増えた気がする。いや、ただきれいだから撮る。それだけでも十分なはずなんだけどね。

撮影:PENTAX K-3 Mark III Monochrome + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art
今回は35mmでバラを撮ることの難しさも改めて感じた。新宿御苑のバラ園は、通路から撮影する位置が限られることもあって、背景の処理がなかなか難しい。
中望遠なら背景を整理しやすい場面でも、35mmでは周囲のものが入ってくる。近づけない場所では、どう切り取るか悩む。もちろん粘れば何とかなる場合もあるけれど、どうにもならないときは諦めるしかない。
それに比べると、K-3 Mark III Monochromeに付けたSIGMA 18-35mm F1.8 Artは少し自由度が高い。
このレンズはAPS-C用の標準ズームでありながら、ズーム全域でF1.8という明るさを実現している。さらにインナーズームという仕様も魅力的だ。その分、長くて重いレンズではあるけれど、PENTAXで使えるAPS-C用標準ズームとしては、なかなか貴重な存在だと思う。もっとも、最近はF1.8を使うことがそれほど多くないんだけど。

撮影:PENTAX K-1 Mark II + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art
それでも、雨に濡れたバラはきれいだった。カラーでは花びらの色と濡れた葉の深い緑が印象的で、モノクロでは花びらの重なりや水滴の質感が目に入る。どちらにも違った楽しさがある。今回は迷いながらも、いつもより多くバラを撮ってしまった。
何でもない風景が、やっぱり好きだ

撮影:PENTAX K-1 Mark II + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art
バラ園を抜け、整備された東側の池を通って帰る。

撮影:PENTAX K-3 Mark III Monochrome + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art
今回の写真を見返してみると、きれいなバラも悪くないけれど、自分の気持ちが向いていたのは、やはり西側の日本庭園で撮った木々や、雨に濡れた道、何でもない風景の方だった。
それは写真としての完成度とは別の話なのかもしれない。でも、写真には撮ったときの記憶が残る。シャッターを切ったときに何を見ていたのか、どんな気持ちでその場所に立っていたのか。自分にとって大切なのは、そういうことなのだと思う。
見栄えの良い写真が撮れるに越したことはない。ただ、それを目的にしすぎると、本来撮りたかったものから離れてしまう気がする。
今回も何か特別な写真が撮れたかどうかより、雨の御苑を歩きながら、自分のペースで風景に向き合えたことに満足している。
散歩の締めは、コーヒーとK-1 Mark II

撮影:PENTAX K-3 Mark III Monochrome + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art
帰りはセガフレードでコーヒーとバスクチーズケーキ。写真をiPhoneにダウンロードしながら、テーブルに置いたK-1 Mark IIを眺める。
バスクチーズケーキは、やっぱりGAZTAの方がおいしいな、なんて考えながら。
改めて見ると、このカメラのデザインは本当に好きだ。尖った三角頭のペンタ部といい、どこか流行とは無縁に感じられる佇まいがいい。
もちろん、見た目だけではない。しっかりしたグリップ、操作系の配置、ダイヤルの存在感とトルク感。特に冬場、手袋をしたままでも扱いやすいダイヤルの感触などは、よく考えられていると思う。
そういう細かいところまで含めて、カメラを操作する楽しさがある。
先週のfp LやDP2 Merrillでの散歩も楽しかった。でも、今日あらためて感じたのは、一眼レフには自分にとって特別な撮影体験があるということ。
ファインダーを覗いて、考えて、操作して、シャッターを切る。手に伝わる感触とともに、その瞬間を写真として残す。そんな一連の行為が、やっぱり好きなんだと思う。
と、K-1 Mark IIの良さをあれこれ考えながら写真を取り込んでいたら、iPhoneのストレージ容量が足りなくなって、ダウンロードできず……。
最後はなんとも締まらないけれど。雨の新宿御苑と、2台のPENTAX。久しぶりに、一眼レフを使う楽しさにじっくり浸れた土曜日だった。
今回使ったカメラとレンズ
今回の散歩では、カラーはPENTAX K-1 Mark IIとSIGMA 35mm F1.4 Art、モノクロはPENTAX K-3 Mark III MonochromeとSIGMA 18-35mm F1.8 Artで撮影した。光学ファインダーで風景に向き合う楽しさと、カラーとモノクロで同じ雨景色の見え方が変わる面白さを、2台を使いながら改めて感じた。
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SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art(PENTAX用)
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